2024.6.17更新

遺言書に私道の記載がないケース

依頼者:長男

被相続人(亡くなった方):父

法定相続人:母、長男、長女

主な相続財産:自宅の土地と建物、銀行3行

相続手続期間:4カ月

ご長男が、お父様の相続の件でご相談にいらっしゃいました。

ご相談時、資料のひとつとして、お父様から預かった自筆の遺言書をお持ちでした。

 

封がされていなかったので、内容を確認すると、以下のような内容でした。

1.以下財産を妻のAに相続させる。

 預金や現金のすべて

 

2.以下不動産を長男のBに相続させる。

 土地 ●区●●1丁目2番

 建物 ●区●●1丁目2番3(家屋番号2番3)

 

遺言執行者は長男とする。

法的に有効な内容としては、上記のみでした。

今回、認知症のAさんがいることを考慮して、故人(お父様)は遺言書を作成したわけですが、思わぬ落とし穴が待っていました。

実際にご依頼をお受けし、不動産の調査を進めると、上記遺言書に記載がある土地以外にも、私道を所有されていることがわかったのです。

遺言書に記載のない私道

道については、遺言書に何も書かれていません。

書かれていない、ということは「指定がない」ということになりますので、今回の私道に関しては、指定がない状況で、その部分の名義変更をするためには、法定相続人となるAさんとBさんの二人で(今回の法定相続人はABの二人のみ)遺産分割協議書を作成し、どのように新たな所有者に名義変更するのかを決めなければなりません。

そこで問題になるのは、Aさんが認知症である、という点です。

相続人が認知症の場合、判断能力がないということで、法律行為をしても法的に無効なものとして扱われます。

あそのため、遺産分割協議書を作成し、署名捺印しても、その行為自体が無効な行為となってしまうわけです。

その場合にできることとしては、「成年後見制度」を利用することです。

成年後見制度を利用し、お母様の代理人として、成年後見人等が選任されることで、その成年後見人等がお母様の代わりに遺産分割協議に参加し、署名捺印も行ないます。

 被相続人は、認知症の母がいるために相続手続きが困難になることを危惧し、遺言書を書いたようですが、私道のことまでは気が付かず、盲点だったことと思います。 

結局依頼者となる長男は、成年後見制度の利用も検討しましたが、相続手続後も成年後見制度の利用は続けなければならないこと等考慮して、私道を除いて、遺言でできるところまでの相続手続きを進めることとなりました。

故人名義のままの私道

結局、今回の相続では、私道は故人名義のまま残ってしまうことになります。

今後、もし不動産の売却等必要となった場合、そのままでは手続きが進められませんので、お母様のご状況によってはやはり、成年後見制度の利用をするか、失礼な話ではありますが、お母様の相続が発生した後に、私道の名義変更手続きをするほかありません。

遺言をのこそうと検討する場合、費用や時間の面から、自筆の方がより身近であり費用も時間もかからないために、作成しやすいというメリットがある自筆証書遺言。

ところが、専門家に相談もなく、あくまで自分で書いたものであるために、上記のケースのような落とし穴が待っている場合も多くあります。 

自分の意思を確実に実行してもらうため、のこすのであれば、専門家に相談したうえで自筆証書遺言をのこすか、公正証書による遺言書の検討をされるのがベストです。

 

当事務所では自筆証書遺言、公正証書遺言のご相談を承っております。

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東京国際司法書士事務所 代表司法書士 鈴木敏弘が監修

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