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2026.10.2更新

パソコンで作った遺言(デジタル遺言)は有効か?

公布日(令和8年6月24日)から3年以内(令和11年6月24日)に施行されます!

今までの遺言制度は、自分で作成する「自筆証書遺言」か、公証役場において「公証人」という専門家が作成する「公正証書遺言」の2つが用いられてきました。特に自筆証書遺言は、原則として本文を本人が手書きする必要がありました。

一方で、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が当たり前になり、「遺言もデジタル化できないの?」というニーズが高まっていました。こうした背景もあり、2026年6月に成立・公布された民法等の改正では、遺言制度についても大きな見直しが行われ、それによって、新たな作成方法としてもっと簡易な「デジタル遺言(保管証書遺言)」が誕生しました。

この記事では、その新しい遺言制度に加え、それに付随する各種改正について解説します。

「保管証書遺言」って何?

これは、「遺言の内容が記録されたデータ等を法務局に保管し、本人が遺言の全文を口述するなどして、法務局が遺言を保管する方式」のことをいいます。

つまり、「パソコンで遺言を作る」だけではなく、本人確認や口述(担当者の目の前で喋ること)などの一定の手続を経て、法務局で保管してもらうという仕組みです。

もっと簡単にいえば、「パソコン等で作成した遺言のデータなどを法務局に保管してもらう仕組み」のことです。ここは大切なポイントです。

 

パソコンで作成できるようになる

新しい保管証書遺言では、パソコン等を用いて遺言を作成することが可能になります。

そして、従来の方式では遺言書内に署名が求められていましたが、それに代わる措置として、電子署名が想定されています。これまでの「手書き」という負担を軽くする方向の改正です。

デジタル機器を使うことが当たり前になった現在の生活に、遺言制度を合わせていく改正といえるでしょう。

 

ただし、「パソコンで作ればそれでOK」、ではありません

ここは、今回の改正を知る上で非常に重要です。

「パソコンで遺言を作れるようになる」と聞くと、Wordなどで遺言を作って、自分のパソコンに保存しておけばいいの?、と思ってしまうかもしれません。しかし、資料に示されている新制度は、そのような単純なものではありません。

先にも書きましたように、法務局による本人確認や、本人が遺言の全文を口述することなどが予定されています。

つまり、デジタル化される一方で、「本当に本人の意思に基づいて作られた遺言なのか」を確認する仕組みも用意されている、わけです。

 

法務局に保管してもらえるメリット

新しい保管証書遺言では、遺言を法務局に保管してもらいます。

これには、いくつかのメリットがあります。

 
  • 1

    紛失や改ざんを防ぎやすい
    資料では、法務局に保管することによって、紛失や改ざん(遺言書の内容を勝手に書き換えること)などを防止することが示されています。

    自宅の引き出しなどに保管しておく場合とは違い、保管場所が明確になるというのも大きなポイントです。

     
  • 2
    遺言があることを知らせてもらえる
    新制度では、遺言者が指定した人に遺言の存在を通知する仕組みも予定されています。
    相続が始まったときに、「実は遺言があったのに、誰もその存在を知らなかった」、
    という事態を防ぎ、遺言に基づく手続を進めやすくすることが期待されています。
     
  • 3
    相続が始まった後は、証明書の請求などができる
    相続開始後には、相続人などが遺言書の証明書の交付請求などをすることができます。
    証明書は、データまたは書面のいずれかを選択でき、オンラインで請求することも可能とされています。
  • 4
    家庭裁判所の「検認」も不要に
    新しい保管証書遺言については、相続開始後の家庭裁判所における検認手続が不要とされています。
    「検認」という言葉は少し難しく、別の記事でも紹介はしていますが、ここでは細かな手続の説明に入るよりも、「法務局に適切に保管された遺言について、相続開始後の手続を進めやすくする仕組みが用意される」、と理解しておくとよいでしょう。
     

オンライン申請やウェブ会議も可能に

今回の遺言制度の見直しは、「パソコンで遺言を作れる」というだけではありません。「オンラインによる保管申請」や「ウェブ会議を利用した手続」も可能になることが示されています。

また、自筆証書遺言書保管制度についても、手続のデジタル化が進められ、「オンラインによる保管申請」、「証明書の交付請求」、「ウェブ会議を利用した各種手続」、「遺言の存在を指定した人に通知」することなどが予定されています。

「もし、もう長くないかもしれない」というときの遺言も変わる

今回の改正では、通常の遺言だけではなく、特別な状況で作成する遺言についても見直しがあります。

その一つが、死亡危急時遺言です。

死亡危急時遺言とは、簡単にいうと、病気などで命が危なく、通常の遺言書が作れないときに使う特別な方法です。

この方式は、「そもそもデジタル化に対応していない」、「証人3人以上の立会いが必要であること」、「命の危険がある状態で証人を確保する負担がある」といった課題がありました。

そこで新しい方式が追加され、「パソコン等で作成したデータを遺言とすること」や、「遺言の作成状況を録音・録画し、証人1人以上の立会いで作成する方式」などが可能になります。ウェブ会議の利用も可能とされています。

 

船舶遭難者遺言も見直される

先の死亡危急時遺言のほか、少し特殊な遺言制度ですが、船舶遭難者遺言についても改正があります。

船舶遭難者遺言とは、船が沈みそうで命が危ない時に、証人2人以上の前で口頭(言葉)で伝える特別な遺言です今回の改正では、船舶遭難だけではなく、「大規模地震等の天災その他避けることのできない事変」が発生した場合も、作成場面として追加されます。

さらに、「録音・録画を利用した方式」、「メール等で特定の者に送信することで証人の立会いを不要とする方式」なども追加されます。

普段の生活ではあまり関係しない制度かもしれませんが、社会のデジタル化や災害への備えを踏まえた見直しといえるでしょう。

 

「押印」も変わります

もう一つ、身近に感じやすい改正があります。それが、遺言における押印要件の見直しです。

今回の改正では、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」、「特別の方式の遺言」について、遺言者や証人等の押印要件が廃止され、押印が任意になります。

また、遺言書の加除その他の変更についても、押印が任意になります。これも、押印をめぐる社会の変化を踏まえた見直しです。

 

「遺言はまだ自分には関係ない」と思っている方へ

遺言というと、「財産をたくさん持っている人が作るもの」というイメージがあるかもしれません。でも、遺言を考えるきっかけは、人によってさまざまです。

たとえば、「家族に自分の希望を伝えておきたい」、「将来の相続について考え始めた」、「財産の整理をしておきたい」、「子どもたちにあまり負担をかけたくない」、という方もいるでしょう。

今回の改正は、こうした「将来に備えておきたい」という人にとって、遺言制度をより身近なものにする方向の改正といえます。

この点、今回の改正を知ったからといってすぐに遺言を作らなければならない、ということではありません。まずは、「自分の財産には何があるのか」、「もし自分に何かあったら、誰に何を残したいのか」、「家族に伝えておきたいことはないか」、を考えてみるだけでもよいでしょう。

そして、今回の改正には施行まで一定の期間が設けられているものがあります。保管証書遺言などについては公布から3年以内、押印の任意化などについては公布から1年以内に施行されることとされています。

そのため、「制度が変わるらしいから、とりあえずパソコンで遺言を作っておこう」と急ぐのではなく、実際の施行時期や具体的な手続を確認しながら準備することが大切です。

 

まとめ 遺言も「デジタルで、もっと身近に」

今回の遺言制度の改正では、

 

  • パソコン等で作成した遺言を法務局で保管する「保管証書遺言」の創設
  • オンラインによる保管申請
  • ウェブ会議を利用した手続
  • 遺言の存在を指定した人への通知
  • 相続開始後の証明書のオンライン請求
  • 検認手続の不要化
  • 特別な方式の遺言のデジタル化
  • 押印の任意化

などが予定されています。遺言制度は、これまで「紙に書いて、印鑑を押して……」というイメージが強かったかもしれません。今回の改正は、そんな遺言制度を、デジタル技術の普及や現在の社会の変化に合わせて見直していくものです。

ただし、「パソコンで作れるようになる」=「好きなように作って保存すれば遺言になる」、ということではありません。新しい制度にも、本人確認や口述など、本人の真意に基づく遺言を確保するための仕組みが設けられています。

遺言は、亡くなった後の財産だけではなく、「自分はどうしてほしいのか」を家族に伝えるための大切な準備でもあります。

今回の制度改正をきっかけに、まずは一度、自分自身や家族のこれからについて考えてみてはいかがでしょうか。

※この記事は、法務省民事局「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」に関する資料をもとに作成しています。制度の具体的な運用や施行時期、個別の事情によって対応が異なる場合があります。個別のケースについては、専門家等にご確認ください。

 

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