遺言があっても、
相続登記(不動産の名義変更)ができないケース
 

せっかく生前に遺言書をのこしていても、きちんと相続人へ承継できないこともあります。今回は、実際にご相談をお受けしたお客様の事例のひとつをご紹介します。

生前に遺言書をのこしていた吉田さん(仮名)

配偶者や子どもがおらず、疎遠な兄弟も多いため、近所に住み何かと面倒をみてくれる姪の良美さん(仮名)に遺贈をする旨、自筆による遺言をのこしておくことにしました。 

実際に相続が発生して、当事務所にご相談にいらした良美さん。

自筆証書遺言であったため、検認手続きを終えて、内容を確認すると、「自分の財産をすべて姪の良美さんに遺贈する」と書かれていました。

 吉田さんの財産としては、自宅不動産と預貯金です。

自宅不動産の現在の登記情報を調べてみると、なんと、法務局で登記されていた吉田さんの住所はだいぶ古い住所で、亡くなった時の住所とは異なる住所でした。 

その後、住民票や戸籍の附票を取得したりして、登記簿上の住所(法務局で現在登記されている住所)と同一の住所の記載がないか確認をしましたが、いずれも同一の住所の記載が見つかりませんでした。 

役所が発行する住民票や戸籍の附票、戸籍に記載されている本籍地のいずれかで、登記簿上登録されている住所と合致する記載がないようであれば、遺贈による相続登記ができません。

そのような場合、一般的には、以下のような書類や資料があれば、登記をすることが可能です。

  • 登記済証または登記識別情報(いわゆる権利証)原本
  • 相続人全員からの上申書
  • 相続人全員の印鑑証明書

上記の「相続人全員からの上申書」とは、例えば今回のように住所の移り変わりについて公的証明書類(住民票等)による証明ができない場合に、相続人全員で「この不動産を所有するのは間違いなく●●である」旨を宣言し、署名捺印(実印)された書面のことを言います。

本来、遺言による相続登記の場合、法定相続人の意思によらず、受遺者(遺言で承継することを指定された人)のみで登記申請が可能なのですが、今回のように登記簿上の住所と同一の記載がある公的書類の準備ができず、遺言者と不動産の所有者の同一性を証明できる書面がないような場合、受遺者一人からの申請では、不動産の名義変更手続きができません。

 そのような場合は、上記のとおり、法定相続人全員の上申書や印鑑証明書も必要となります。

 今回、被相続人の吉田さんにおいては、兄弟姉妹と疎遠になっていて、良美さんも連絡がとれない親族や、あまり連絡をとりたくない親族もいたため、上申書への署名捺印等をお願いすることができませんでした。

 結局、良美さんは不動産以外の預貯金のみ、遺言による相続手続きを進めていくことに決めました。

このケースで一番注目すべきは、登記簿上の住所と現在の住所が同一でなかった点です。

不動産の所有者が住所変更をした際、速やかに登記事項の変更をするよう法令で定められていますが、変更しなかったからといって、特に罰則規定がありません。

そのため、長い間住所変更をせずに放っておく人も少なくないのです。 

今回のケースで言えば、きちんと吉田さんが生前に住所変更の登記をしておけば、希望通り、良美さんに引き継いでもらうことができたのです。

更にいえば、遺言書を公正証書遺言でのこしたり、自筆であっても専門家へ相談していれば、こうした過ちは未然に防げたはずです・・・。 

あなたはきちんと、登記簿上の住所変更の手続きをしていますか?

住所変更をせずに放っておくと、自分が亡くなった後も親族に迷惑をかけることになりかねません。

当事務所では住所変更の登記申請や、遺言書作成について、
ご相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。

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この記事の監修について

東京国際司法書士事務所 代表司法書士 鈴木敏弘が監修

相続税申告から不動産・預貯金の名義変更などの相続手続きを何度も経験する方は多くはありません。
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