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2026.10.2更新

成年後見制度は「一度始めたら一生」じゃなくなる?2026年の民法改正をやさしく解説

「親が認知症になったら、財産の管理はどうすればいいんだろう?」

「成年後見制度というものがあるらしいけれど、一度利用するとずっと続くの?」

親の将来を考え始めると、こんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

成年後見制度は、判断能力が十分ではない方を法律面から支えるための制度です。

一方で、これまでは「本人に必要な範囲を超えて制度の利用を続けなければならないことがある」「本人の意思が十分に反映されないことがある」といった課題も指摘されていました。

そこで、2026年6月、成年後見制度と遺言制度などを見直す「民法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。

今回の記事では、そのうち成年後見制度の見直しについて解説します。

 

そもそも成年後見制度って何?

成年後見制度とは、判断能力が十分ではない方について、家庭裁判所が選んだ人などが、その方を法律面から支援する制度です。

たとえば、「財産の管理が必要になった」、「契約などの法律行為を一人で行うことが難しい」、「遺産分割など法律上の手続をする必要がある」といった場面で利用されることがあります。

現在の法定後見制度には、「補助」、「保佐」、「後見」という3つの制度があります。

本人の判断能力の程度(補助が程度が軽く、後見が一番重い)などによって、利用できる制度が分かれていました。

 

これまでの成年後見制度には、どんな課題があった?

今回の改正を理解するために、まず、なぜ制度が見直されることになったかというと、「必要以上に本人の自己決定が制限されることがある」という点です。

これまでの後見制度では、本人が「物事の結果を全く判断できない状態にある」と認定されると、包括的な代理権・取消権を持つ「後見」の制度しか利用できませんでした。

簡単にいうと、「今回必要なのは遺産分割の手続だけなのに、もっと広い範囲について後見人の関与が必要になる」ということが起こり得る仕組みでした。

今回の改正では、こうした点を見直します。

 

「必要なことだけ」支援してもらえる仕組みへ

改正後は、基本的に「特定の行為について必要な権限を与える仕組み」に一元化され、全て「補助人」という呼び方になります。(後見人や保佐人は廃止になります)

たとえば、「この手続については、補助人に代理してもらいたい」というように、必要な行為について個別に代理権を付与することができます。

つまり、「その人に必要な支援は何なのか」というところから制度を考えやすくする方向へ変わるわけです。

「一度始めたら一生」ではなくなる?

今回の改正で、特に注目したいのがここです。

これまでの後見・保佐の制度では、利用するきっかけとなった事情が終わっても、本人の判断能力が回復しない限り、制度の利用をやめることができませんでした。

たとえば、「遺産分割のために制度を利用したけれど、その手続はもう終わった」という場合でも、制度を終了することが難しいという問題がありました。

今回の改正では、「本人の判断能力が回復していない場合でも、制度を利用する必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときには、制度利用を終了できる仕組み」が設けられます。

そのため、これまでの「一度始めたら、なかなか終われない」というイメージは、大きく変わることになりそうです。

 

本人の「どうしたい?」をもっと大切に

成年後見制度では、本人を支援することが大切です。でも、支援する側の都合だけで物事を決めてしまってはいけません。

そこで今回の改正では、本人の意思や意向をより尊重する仕組みが盛り込まれています。

たとえば、補助人が仕事をするときには、「本人に情報を提供する」、「本人から話を聴く」、「適切な方法で本人の意向を把握する」、ということが明確にされています。

また、家庭裁判所が補助人を選ぶ際にも、考慮すべき要素の冒頭に「本人の意見」が規定されます。

制度を利用する本人にとって、「自分のことなのに、自分の意見が聞かれない」ということがないようにする。今回の改正には、そうした考え方が表れています。

 

後見人等の「交代」も変わる

もう一つ注目したいのが、成年後見人等の交代についてです。

これまでは、成年後見人等の解任(辞めさせること)について、主に不正な行為や著しい不行跡など、成年後見人側の事情(預かっているお金を横領してしまったなど)に着目した仕組みとなっていました。

今回の改正では、「本人の利益のために特に必要があるとき」も解任事由に加えられます。

つまり、成年後見人等に横領などの不正がなくても、「本人にとって、この人による支援を続けることが適切ではない」という場合に、交代が可能になる余地が広がります。

本人に合った支援を受けられるようにすることも、今回の改正の重要なポイントです。

 

成年後見人等の報酬についても見直し

成年後見人等の報酬についても、今回の改正で見直しが行われます。

資料では、家庭裁判所が報酬を決める際に、「補助人が行った仕事の内容などをちゃんと考慮することを明確にする」とされています。

また、どのような場合に報酬がもらえるのかを予め知りたいという当然の希望もあるかと思いますので、報酬請求が認められた事案の実績を公表することも予定されています。

 

本人が亡くなった後の事務も変わる

成年後見制度を利用している方が亡くなった場合、その後にもさまざまな事務が発生します。

今回の改正では、補助人についても一定の死後事務を行えるようになります。

たとえば、「本人の火葬・埋葬に関する契約」、「本人が死亡した当時の権限の範囲内で、相続財産の保存に必要な行為」などです。

本人が亡くなったからといって、その瞬間にすべての事務が終わるわけではありません。そのため、こうした場面にも対応できるよう制度が見直されます。

 

任意後見制度も、より柔軟に

成年後見制度には、家庭裁判所が関わって支援者を選ぶ「法定後見」だけではなく、本人があらかじめ後見人を決めておく「任意後見」という仕組みもあります。

今回の改正では、この任意後見制度についても見直しが行われます。

たとえば、「任意後見契約の効力を発生させる順番について合意できる」、「一定の場合には、任意後見監督人を選任せず、家庭裁判所が直接監督できる」、「補助制度を利用しても、任意後見契約を存続させることができる」、「本人が公正証書で指定した人も、任意後見契約を発効させるための裁判手続を申し立てられる」、といった見直しが予定されています。

本人が将来に備えて、自分の意思で支援の仕組みを準備しておく「任意後見」を、より柔軟に利用できるようにする方向です。

 

すでに成年後見制度を利用している方はどうなる?

今回の改正では、現在すでに後見・保佐・補助を利用している方についても、経過措置が設けられています。

どのようなものかというと、「現在の制度をそのまま継続する」、「新しい補助制度へ移行する」、「制度利用を終了する」といった選択肢が示されています。

したがって、「今、成年後見制度を利用しているけれど、法律が変わったらどうなるの?」と心配されている方は、今後の具体的な制度の運用や経過措置を確認していくことが大切です。

 

こんな方は、一度考えてみてください

次のポイントに当てはまる方は、今回の改正を着目しておくとよいでしょう。

  • 1
    親の財産管理について、家族で話したことがない
  • 2
    将来、判断能力が低下したときのことが心配
  • 3

    成年後見制度について名前は知っているけれど、内容はよく分からない

  • 4
    任意後見について検討したことがない
  • 5
    すでに成年後見制度を利用している

そして、特にこれから制度の利用を考えている方、大切なのはいきなり制度を利用することではありません。まずは、「将来、本人がどんな生活をしたいのか」「どんな支援が必要になりそうなのか」を家族で考えておくことです。

まとめ――成年後見制度は「本人に合わせる」方向へ

今回の成年後見制度の見直しを一言で表すなら、「本人に必要な支援を、本人の意思を大事にしながら、必要な範囲・期間で利用する」という方向への変更だといえるでしょう。

「成年後見」という言葉を聞くと、どうしても難しい法律制度をイメージしてしまいます。でも、その根底にあるのは、「本人が自分らしく生活するために、どんな支援が必要なのか」という、とても身近な問題です。

今回の改正を、家族の将来について考える一つのきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

※この記事は、法務省民事局「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」に関する資料をもとに作成しています。制度の具体的な運用や施行時期、個別の事情によって対応が異なる場合があります。個別のケースについては、専門家等にご確認ください。

 

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